第28回ハイメスコンクール<声楽部門>  入賞者の発表

第1位  山田 花織(ソプラノ)

入賞者コメント
(受賞が)信じられないです。
日本の素晴らしい先生方の多くも本場で勉強をされていますが、声楽は体が楽器で個人個人違うので、それを間接的にではなく、直接自分の体で学ぶことに意味を感じたのが留学を志したきっかけです。
学生の頃からいつかは留学したいと漠然とは思っておりましたが、たまたま大学院の時に海外のマスタークラスを受講する機会があり、素晴らしい先生と出逢い、昨秋からミラノに留学しています。
日本とイタリアでは環境も文化も全然違い、住んで身をもって体験してみると、本当に小さなことがうまくいかなかったり、日本が本当に便利で素晴らしい国なんだなということを改めて感じ、日本の良さも向こうの良さも知ることができ視野が広がり、毎日学ぶことが沢山あって刺激になっています。
外国で勉強をするとなると自由に働けるわけでもなく、経済的にもどのくらいの期間住んでいられるのか分からないなか、一日でも長くいたいという気持ちが強くなりましたが、このコンクールで留学を支援して下さるというのは本当に有難いです。
私が勉強しているオペラというものは、ヨーロッパの作曲家がヨーロッパの人種の歌手に向けて書いた作品が多いので、それをアジア人がするとなるとたくさんの障害がありますが、日本人であることの良さを残しつつ、彼らと同等対等に表現できるようになることを目指したいと思っています。 

第1位の山田花織さんには、宝石の玉屋様から副賞として、“純金ウィーン金貨ハーモニー”(1oz《オンス》)が贈呈されました。

第2位   吉田 真樹子(ソプラノ)

入賞者コメント
いい集中力を持てたので気持ちよく歌えましたが、とても上手な方が一杯いらしたので、入賞させて頂くことができてとても驚いています。
札幌大谷大学に在学中、このコンクールのチラシを見ていたのですが、今までなかなか(声楽部門の開催年の)タイミングが合わずにおり、既に現在ハンガリーで学んでいます。もう少しで一区切りが来るので、今は就職や新たな留学等この先の進路を考えているところです。
歌を続けていきたいと思い始めた頃から、歌でお客さんを感動させたいなという気持ちが常にあり、自分がもっと表現することを目指しています。
メトロポリタンオペラなどを見て、歌い手であり演者であり役者さんであり、という姿や、自分の先輩方の姿に憧れるなか、皆さんに共通していた力強さだったり、表現力などにとても感動したので、自分も将来そういう感動を人に与えたいと思っています。

第2位   志村 麻衣(ソプラノ)

入賞者コメント
前回の声楽部門の受賞者が2人とも私の先輩で、このコンクールのことは知っていましたが、レベルが高いコンクールだと聞いていて(自分の)受賞が信じられない気持ちです。
私の恩師が極東藝術大学で学ばれた方だということと、ウラジオストクで2年に1度行われる国際コンクールで(自分が)入賞したことがきっかけで、留学は9月からロシアのウラジオストクを予定しています。
今回も歌わせて頂きましたが、ロシアものが好きなのですが、日本ではまだマイナーかなと感じており、それを将来少しでも皆様にもっと身近にお届けできるようになればという気持ちです。
ロシア人の方は結構親日の方が多いので、国際的な交流も含めて少しでも音楽でお手伝いできればなと思っています。ロシアオペラ中心になると思いますが、将来はロシアの劇場で歌えるようになりたいです。 

審査委員長 立野 至美先生からの講評

皆さん、こんにちは。立野至美と申します。
本日は審査委員長を務めさせて頂きまして、誠にありがとうございます。
そして、コンクールに参加された皆様、今日は本当にお疲れ様でした。
私の話になりますが、私は第一回目のこのコンクールで優勝をさせて頂いたことで、先ほど藤田久雄理事長もお話になられましたように、念願のイタリア、ミラノに行くことが出来ました。
イタリアの劇場で13年間ずっと歌わせて頂き、日本に帰ってまいりました。そういうきっかけを作って下さったのが、このハイメスコンクールだったのです。本当に心より感謝致しております。本当にありがとうございます。
そして、この度このコンクールの審査委員長を務めさせて頂き、大変に名誉なことと、そして、私が今現在、舞台に立たせて頂き、歌わせて頂き、そして大学でも教える場を持たせて頂き、ハイメスコンクールの皆様に、少しでもご恩返しが出来たらと思っております。
さて、今日参加された皆様は、将来の大変有望なアーティストの皆さんですが、10分の演奏時間の短い審査ではありましたが、そのなかで、皆さんご自分の納得のいく演奏が出来ましたでしょうか。

オペラやリートなどを歌う前に、一番必要な基本の発声をご自分の体全部で条件反射のように感じるまで毎日勉強されておられますでしょうか。きっと皆さんのことですから、今日聴かせて頂きまして、皆さん本当に、本当に、本当に努力をされているということがとてもよくわかりました。その中で、作品を作っていくうえで、舞台に立ち、役や歌詞を表現しなければならない、ということは外国語で歌うときに、その外国語が自分の国、日本、母国語のようにきちんと語学を分かっていらっしゃるかどうか、ということもすごく大切なことだと思います。
私がイタリアに行き、やはり一番言われたのは、顔のこともありますけれども、オリエンタルな顔だね、と言われたのはもちろん、顔が大きいね、目が吊り上っているね、ということは別として、一番大事なのはやはり語学が本当に向こうの方と同じように理解してできているかどうかということも大切なことなので、今回それも視野に入れさせて頂いて、審査をさせて頂きました。何より今回の皆様の演奏のレベルがものすごく、ものすごく高かったので、こちらが聴いていてワクワクするぐらい皆さんとてもお上手で、先生方ともどのように審査しましょうということで色々先生方とも沢山お話をさせて頂きました。
とにかく、素晴らしい演奏の方々の中での審査でございますので私達はよく話し合い審査員全員で決めて参りました。
それから、今回の演奏でちょっと気づいたことがありましたので、少しだけお話させて頂いてよろしいでしょうか?
まず、今回感じましたのは、皆様ステージにこちらからお入りになる、その時に、まず入る寸前に、きちんと舞台人として、普通の、例えば私は立野至美と申しますけれど、今ステージにおりますが、舞台人として立っております。が、普通は、ただの自分自身かもしれません。ですが、ここステージに入る前には、皆さんには必ず、舞台人、アーティストとして、気持ちを切り替えて入ってきていただきたいな、ということを今日はとても感じました。
それから、ステージに立ち歌い出す前に、ピアノ横にお立ちになり、皆さん精神を集中されたり、歌いだす前に、伴奏の方と目を合わせたりされますが、その時に、こうされると美しいですが(体を90度横にする)、とても素敵なドレスを着てらっしゃるのに、(後ろ向きになり客席にお尻を向ける)というような感じでお客様にお尻、背中を向けるというのはステージマナーとしてはちょっといただけないと思うところが少しございましたので、もしそのようなことを、もしやってしまったとしても、減点の対象にはまったくなっておりませんけれども、これから皆さん素晴らしいアーティストになられる方々ばかりですので、これから演奏会のたびに少しでもこの事をちょっと気にして頂くと、きっとより良いより綺麗で美しい舞台ができるのではないか、と思い願っております。どうぞよろしくお願いします。もし分からない事がございましたら、何なりと聞きにいらしてください。
それから、表現力として、先ほども申しましたように、語学的な面、演技の面、感情表現などが身体の動きと連動していない方も多くみられました。発声を考えるがゆえに、音楽やリズムと手が一緒に無意識に動いてしまったり、せっかく素晴らしい声が出ていても、聴く方はこの不自然な動きが気になってしまい、せっかくの歌に集中できないときがあります、それがとてももったいないので、きちんと動きは演奏の中での有効な動き、より良い発声、それから、表現力を付けていくために皆さん必ずご自分の前に鏡を置いてご自分をよく観察してトレーニングをなさってください。
皆さんの講評にも書かせて頂きましたが、鏡の前で歌って下さる事でご自分がどのような癖があるか、色々見えない事がとてもよくわかってくると思います。それから、ビデオを撮ったりもすると大変良い事だと思います。そうすると、ますます美しい舞台になると思いますので、これからますます頑張って頂きたいと思います。
本日演奏された皆様が、今後、世界のプリモ、プリマにはばたかれ、ご活躍されることを心より、心より願っております。
どうぞ皆様、頑張って近い将来大活躍してください。心より応援しています。本日はどうも有り難うございました。

2016.3.22 第28回ハイメスコンクール表彰式にて

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