第8話 【留学に向けて・希望者からの質問】

駒ヶ嶺:さて時間も残り少なくなって参りました。ここにきて具体的な質問などありませんか。川島さん、いかがでしょうか?もちろん他の方もどうぞ。

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川島:私は海外の先生とコンタクトを全然取れない環境です。例えば海外に留学とか、プライベートレッスンの場合、そのきっかけはマスタークラスなどで先生に知り合うという事が一番良いのでしょうか?

高橋:私は東京にある「海外マスタークラス」を仲介している会社に直接電話をしました。ヨーロッパにも興味がありましたが、色々な経緯でニューヨークも良いなあと。是非メトロポリタンオペラを観たかったので、そのような理由もありました。最初のマスタークラスに一週間行き、その時のレッスンがとても衝撃的で「今はこれだ!」と直感し、その場で「先生のレッスンが今の私に絶対必要です。是非考えて下さい。」とお願いしました。3ヵ月後にお返事を頂き、英語を話せる事が契約条件でした。またマスタークラスも良いですが、学校に入られるご予定があるのであれば、入学をされるのが良いかと思います。

駒ヶ嶺:高橋さんは東京できっかけを掴まれたのですね。川島さんの場合、留学のきっかけをどう掴つむかが目下の問題ですね。知人の繋がりで希望の先生がいらっしゃる学校に行くか、もしくは望む学校を受験するか。そこがはっきりない状態なのですね?

高橋:音楽雑誌、インターネットから「音楽留学」を検索すると沢山情報が得られます。その中から良さそうなものを片っ端からメールや電話するとか、マスタークラスの先生の名前から、知らない歌手でも、検索するとその先生の歌がYOUTUBEで聴けます。こんな歌を歌うんだ、とか。この先生の声が好きとか、そんな風に調べるのも良いのではないかと思います。

駒ヶ嶺:現在の先生との繋がりから、または自分ならではの留学の道を切り開くもありです。幸い現代は情報が受けやすいです。ある意味慎重に、しかし勇気を持ってきっかけを掴みたいですね。

横路:私はドイツに行って探しました。繋がりとか誰かの紹介というのはいやだったんです。それで学校に入学するまで半年かかりました。川島先生のレッスンを自分で見学しにいったり、見聞を広げたりと。

駒ヶ嶺:留学の意志が固まっていても、どのようにその一歩を踏み出したら良いのか。前回の座談会「留学劇場学」では、参加者5名のそれぞれのきっかけについて話して頂きました。大変オリジナリティーに富んでおりました。皆さんもこれから独自のシナリオを書き始めて下さい。

駒ヶ嶺:中島さんは食べ物以外に心配な事はありますか?ハンガリーは大谷大学との繋がりがありますね?

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中島:はい、リスト音楽院があります。

駒ヶ嶺:そこをラインにして行こうかなと思ってらっしゃるのですか?

中島:ドイツに関しては先生について全く分からないのですが、探していってみるのもいいかと考えています。

横路:失礼ですけど、今おいくつですか?

中島:25です。

横路:ドイツなら早く行ったほうがいいです。

中島:27までですか?

横路:いや、私は22か23でダメと言われた学校が一つありました。今はもっと厳しくなっていて、早ければ早いほどいい場合が多いです。

駒ヶ嶺:じゃあまずドイツに行って、その後ハンガリーですね(笑)。25歳ならまだ可能性が山ほどって感じがしますけどもね。国によってはそうなのですね。では伊藤さん、何か他にご質問は?

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伊藤:あまり無いかとは思いますが、日本人、アジア人ということで生活の中やレッスンの中で差別的に扱われることはありましたか?

山本:今は毎年コンスタントに何人か行っているので、日本人には慣れてると思います。私が留学しているあいだに吹奏楽で中国人を題材にした曲を演奏したことがあり、そのときにまわりで中国人について何か外見に関する話をしていて、ノルウェー語だったのでそれが差別的な内容だったかもちゃんと分からないんですけど、私が日本人あることに途中で気がついて謝られてたことはありました。

横路:向こうで就職しようとした時にちょっと引っかかることはあるかもしれないです。

山本:オーケストラのオーディションでは感じている人はいましたね。カーテン審査だといいんだけど、最終審査でカーテンがなくなると・・・というふうに。

駒ヶ嶺:差別でもなく全く陰湿さは有りませんでんしたが、私は時々中国人に間違われました。私はネオナチが結構怖かったです。ドイツは大丈夫でしたか?

横路:私のいた町にもちょっとありましたが、なにかされることはなかったです。

駒ヶ嶺:やはり色々な思想を持った人がいる事は覚えていなければ。アメリカは?

高橋:日本人はすごくリスペクトされた存在で、ジャパンから来ただけで、「お〜っ」てフレンドリーにハグ、みたいな状態だったので生活しやすかったのです。しかしオペラのオーディションでは、日本人と言う事で、現在ニューヨークで活躍されてるソプラノの方ですが、ヨーロッパではバタフライの主役をされ活躍中ですが、その方ですら落とされ、バタフライ以外のものは受からないと云う苦労話を聞きました。彼女は本当に素晴らしい歌手ですが、最初からアジア人への差別があると思って行ったほうが楽だよって言われましたね。悔しいですが現実は厳しく、欧州の文化を日本人が真似してやっているくらいに思うと良いかもしれません。

第9話 【留学に向けて・経験者からのエール】

駒ヶ嶺:さて本日はこれから留学をされる方々は、様々なケースがあると思いますが、新しい情報得る事が出来ましたでしょうか。では最後に留学を希望されている方々に向け、経験者からエールの言葉をお願いいたします。

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高橋:やっぱり日本と違う文化なので、躊躇せずにどんどん出かけて行くのがいいと思います。私は音楽大学を卒業し3年間OLをして歌を中断していました。あるきっかけで歌に戻ってきた時、一から始め、やっとの思いで留学できたのが30歳でした。遅くはなかったなと思っています。いくつになってからでもやりたい気持ちが一番高まっている時に行くと、どんな困難にも打ち勝てるような気がしますので、あまり焦らなくてもいいのではと思います。日本では得られない沢山の事に出会えますので、是非是非経験されることをお勧めいたします。

駒ヶ嶺:有難うございます。横路さん、やはり留学は少しでも早くですか。

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横路:留学は日本では絶対できないような経験ができます。例えば人前で演奏する機会がものすごく多いと思いました。これは演奏家として一番大事な事だと思うので素晴らしいことだと思います。また、外国で生活するとか苦労するとか音楽以外のことでも自分がすごく成長するので、是非、頑張ってほしいと思います。今まで色々な留学生を見たり、人がお世話している話をきいていると、ごくまれに、失敗していく人も見ることもありますが、それはすべて他人任せにして自分で何もしようとせず、ただなんとなく憧れて来てしまった人です。しっかりとした意思があれば、大丈夫だと思います。

駒ヶ嶺:勇気付けられる先輩のお言葉、有難うございました。そして、山本さん。

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山本:自分で色々やらなければならないのは勿論なのですが、本当に困っている時は、こんなことで今困っているから助けて、と訴えれば、手を貸してくれる人はいます。困っていると伝えないと向こうも分からないし、嬉しいことは嬉しいと伝えれば喜んでくれるし、もっと教えてくれることもあるだろうと思うし、何でも伝えてコミュニケーションをとらなければ、あの人は何を考えているのかよく分かんないよね、ということになってしまいます。やはり人種の違いなのか、空気で察するということは難しい気がします。何でも口に出して伝えたらいいと思います。

駒ヶ嶺:委員の立花さんも経験者のお一人として何かお願いします。

立花:自分の直感を信じてください。海外へいくと感覚が研ぎ澄まされます。住まいを選ぶときでも、入った瞬間にヘンな違和感があったときは、いわくつきの物件だったりします。道をあるいていても、こっちにいったらまずいとか、そういう時の直感は結構当たるので、それを信じてください。

駒ヶ嶺:森吉さんからも留学経験者として励ましの言葉を。

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森吉:偉そうなことは言えませんが・・。私の場合は、最初は土地環境に馴染んでいるつもりで生活していましたが、自分は日本人だなぁということを滞在年数が長くなるほど強く感じるようになり、人生の生き方について日々考えていました。海外で生活すると色々あるかもしれませんが、自分が勉強していることだけでなく、広い意味で日本にはない海外の長所短所がみえたり、日本にいるだけでは気がつくことが難しい日本本来の素晴らしさに目がいくようになったり、国、人種の違い、そこから歴史作られてきた芸術文化、歴史、環境の違いを知ることをはじめ、とにかく様々なことを現実的に見聞し学び考える機会として、人生を豊かにする大変素晴らしい経験になる思います。なにか信念をもった生き方、生活ができれば、何か危機に陥っても困難に向き合っても必ず乗り越えていけると思います。健康や安全には特に気を付けて行ってきて頂きたいと思います。

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駒ヶ嶺:心のこもったメッセージを有難うございました。最後になりましたが、是非留学後は札幌の皆さんにその経験を音楽で聴かせてください。故郷も大事にして頂きたいです。本日は「留学」がテーマですが、留学だけが音楽の勉強ではないと思います。つまりどこにいようと自分の意思によって学び方は存在する事でしょう。ハイメスのメンバーも、それぞれのスタイルで留学され、また日本に居ながらにして広い視野を持って勉強されている方もおられます。だからこそ留学は誰でも出来ることではないと思いますし、色々な条件が揃わなければ出来るものではありません。留学を経験出来る事は大変幸せな事でしょう。またその期間に「孤独」を体験する事と思います。その時こそ、自分が鍛えられるのではないでしょうか。助けてくれる人の存在に感謝し、自分を支え、励ましてくれる大切な友達や親や、愛する人の存在に改めて気づかされます。それは日本では得られないエネルギーとなる事でしょう。どうぞ思いっきり「孤独」を味わってきて下さい。皆さんが帰国され、素敵な演奏を聴かせて下さる日を心からお待ちしております。そして、留学経験者の皆様の体験談は非常に興味深く、貴重なお話ばかりでした。益々のご活躍を心からお祈り上げます。

皆様、本日は誠に有難うございました。



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