第3話 【言葉の事情】

駒ヶ嶺:楽器の方は大変ですね。では次に言葉の問題について。

写真

山本:ノルウェーのベルゲンは都市部なので年配から中学生くらいの子供まで英語をしゃべることができます。グリーグアカデミーに関しては小さな学校なので、連絡などの掲示板についてはノルウェー語で書かれています。マスターコースの授業は一応英語とのことでしたが、バチェラー学部の授業はノルウェー語のみです。マスターコースの授業も結局ノルウェー語でしか話さないことも多くて、英語で受講できるつもりでマスターコースに入学した人は苦労していたようです。私もノルウェー語は殆ど勉強しないままいってしまったんですけれど、レッスンに必要な「Aの四小節前から」などといった指示をする言葉は、学校が始まってすぐにまわりの人に聞いたら凄く親切におしえてくれました。掲示に関してもそのへんの人を捕まえて聞けば快く教えてくれます。ノルウェー語がマイナーな言語であるということは自覚しているようです(笑)。

駒ヶ嶺:では、ドイツの場合は如何でしょう。

写真

横路:最近、学校に入るのに語学が厳しくなってきました。私が行った5年前よりはるかにきびしいです。語学が出来ないと受験すらできなくて、願書を出したのに語学で跳ねられる人もいました。受けたい学校があれば、どのくらいのレベルの語学が必要か調べておく必要があります。

駒ヶ嶺:ドイツの大学を卒業されるとなれば、ドイツ語で全ての講義を受けるわけですね。

横路:すべてドイツ語です。ドイツ人も英語を上手に話す方もいますが、学校で英語を使ったことは一度もありませんでした。ただ、今のところ例えばハノーファは英語が主だそうです。国際的に活躍している学生が多いせいだと思いますが、それは特殊な例です。食堂などでも英語と、韓国語が飛び交っているそうです。

駒ヶ嶺:ドイツは韓国人が凄く増えていると聞いています。どこのオペラ劇場も韓国人が沢山と伺っています。さてアメリカはいかがでしょう。

写真

高橋:ジュリアード音楽院やマスネ音楽院の基準を調べてみたところ、TOEFLの基準点数が高めだったのを覚えています。生活に関しては、ネイティブに話せなくてもあまり問題がない場所でした。ニューヨークは様々な国の人々が集まる街で、英語の発音がめちゃくちゃな人が多く、買い物だどは身振り手振りで分かり合えます。そんな中で、ちゃんとした発音の英語を身につけたいと思い、自分の周りの人で英語を一番綺麗に話すと思う人が、自分の先生でした。先生と同じアパートで密接に生活したお陰でおかしな発音の英語は身につかなかったかなと思います。音楽家はみなさん耳が良いので、訛りのある発音などですと自然に身についてしまうので、気をつけたほうが良いと思います。また、早く語学を身につけたければ、なるべく日本人とつるまない。寂しくても言葉がなかなか通じなくて辛くても負けずに、現地の方と積極的に交流する事が大切だなと思いました。

駒ヶ嶺:特に声楽を学ばれるのであれば、日常生活で必要なレベルだけではないですよね。リリーさんは言葉について質問がありますか。もしよろしければどうぞ。

写真

大平:私は高卒での留学を考えています。日本の音楽大学に行かずに、直接イタリアの大学への入学を希望しています。そうなると、どのくらい楽典を知っていなければならないのか、向こうでどの位知ってて当たり前なのか、どの位向こうの言語で知っておくべきか、そういうことについての心得のようなものを教えていただけますでしょうか?

駒ヶ嶺:なるほど。ではリリーさんのご質問に答えられる方はいらっしゃいますか?

立花:向こうの学生と同レベルの言語を求められますよね。それですごい苦労していたパリ音楽院の学生はいました。パリ音楽院は、そこでフランス語の授業もあったらしくて、そこで勉強してなんとか楽典の単位とったっていう。

駒ヶ嶺:パリ音楽院受験のために、言葉の準備をされたということですか?

立花:もちろんしていたみたいですよ。入ってからは完全に他の学生と同じレベルを求められ、それで当たり前に授業をすすめられます。音楽の知識もです。

横路:特に、和声に関しては日本と違いました。現地のやり方で勉強して行ったほうがいいと思います。ドイツだと属七の小さな7の表記とか無いんです。

写真

駒ヶ嶺:横路さんの場合、日本の大学を卒業後、最初にドイツ語の学校に行かれたということでしたね。

横路:私の学校は、当時は語学証明というのは必要なかったのですが、やっておかないとレッスンも受けられないし、授業も受けられないし・・・

駒ヶ嶺:受験をするために前乗りして、言葉を先に勉強されてから受験するという堅実な方法を取られましたね。

横路:学業と並行してドイツ語を勉強するのは、そういう人を見ていると、すごく大変そうでした。

駒ヶ嶺:勉強の内容を区切って集中してやった方がスムーズにいくのかもしれません。

山本:私の友人のケースなんですけれど、日本では保育の専門学校を出てから、ノルウェー人の先生とたまたま出会い、それまでアマチュアでやっていたため準備も音楽の知識もあまり無い状態で単身乗り込んだ方がいました。

駒ヶ嶺:かなり勇気のある方ですね

山本:はい(笑)。その人は、ノルウェーの音楽大学には最初は入れず、大学と高校の間にある高等専門学校に1年間在籍して、その間ノルウェー語も学んで、かなり勉強できたと言っていました。

第4話 【住居について】

駒ヶ嶺:次に、実際の外国生活で直面する事を伺ってまいりましょう。生活を始める時、一番大事なのは住むところではないでしょうか。その住居をどのように見つけたのか、山本さんからお願いします。

写真

山本:私は交換留学を申し込んだ時に、学生寮への入居を希望ました。

駒ヶ嶺:その寮は食事付きですか。それともキッチンがついていますか?

山本:部屋が3パターンありまして、部屋が独立して、8人がキッチンを共同で使うパターン、部屋とキッチンがセットになっているパターン、2人でキッチン付きの部屋をシェアするというパターンがありました。

駒ヶ嶺:値段にはかなり違いがありますか?

山本:そんなに大きくは違わないですね。普通に街で部屋を借りるよりもすごく安くすむようだったのでありがたく利用させていただきました。

駒ヶ嶺:学校には近かったですか?

山本:いえ、バスで20分、歩いたら1時間ぐらいのところでした。

駒ヶ嶺:「ノルウェーの森」を通ってですね(笑)。伊藤さんはもう決まってますか?

伊藤:いえ、まだ決まっていません。

駒ヶ嶺:ドイツの場合、横路さんはどうでしたか?

写真

横路:最初にベルリンに住んで、半年後に大学のあるロストックの大学にいったのですが、ベルリンに知り合いの方がいて、広い部屋だったので一緒に住まわせてもらっていました。自分で探すことはしませんでした。

駒ヶ嶺:始めは知り合いを頼って行くところからスタート方法もありますね。

横路:最初私は一人暮らしでした。ちょうどクラスメイトが次に入る人を探していて入ったのですが、高かったのですぐ学生寮に移りました。練習は全部学校でしました。

駒ヶ嶺:よくピアノ付きで貸してくれる所もありますね。練習場所を学校などで確保できれば普通の部屋を借りられますが。

横路:又はピアノをレンタルするか、買う。

駒ヶ嶺:ドイツの場合でした。ではアメリカ、高橋さんの場合は先程先生のおうちにという話がありましたが。

写真

高橋:最初は一人暮らしをしようと思い、日本人経営の不動産会社が沢山ニューヨークにあり、国際電話で聞きました。しかし「良い部屋あります。明日までお金を振りこんでください。契約しましょう。」という怪しい会社も多かったです。私は北海道文化財団から奨学金をいただき、その規定で10ヶ月はニューヨークに滞在しなければいけませんでした。10ヶ月の学校はなく、プライベートレッスンであることと、観光ビザでしたので3ヶ月ごとに帰国入国を繰り返しました。そのため1年契約の賃貸は難しく、長期契約は諦めました。最初は1ヶ月15万から20万くらいの高級マンションでしたが、ゴキブリとの戦いでした。しかし、何かとマンションのドアマンに助けられました。それから、その賃貸マンションは朝食つきでコーヒーとベーグルのサービスがありました。ところが、私の先生がルームメイトを探しておられたので、私から同居を申し込みしました。今思えば、本当に図々しいお願いをしたと思っていますが先生に感謝しています。

第5話 【食事について】

駒ヶ嶺:さてまだお声を発していない方がいらっしゃると思うんですけれども(笑)。中島さん、あなたはお食事はどういうものがお好きですか?

一同:(笑い)

駒ヶ嶺:絶対日本食ですか?

中島:パンとか(笑)

駒ヶ嶺:じゃあ、洋食は大丈夫!食生活は準備できているわけですね!留学中は自炊をしようと思っていますか?

写真

中島:自炊は出来ないので・・・

駒ヶ嶺:はい皆さん、ここに日本の典型的な男子がいますよ(笑)。それは大変だと思いますよ。今から自炊の勉強もして下さい。それでは食の状況について、しっかりと教えてあげてください!ノルウェー、どうぞ。

山本:ノルウェーは物価が非常に高い国なので、自炊をしないと親御さんが泣いてしまうと思います。ぜひ人参1キロとか買って自炊をしていただきたいです(笑)

駒ヶ嶺:やはり食事は体調を整える自己管理の部分で重要ですね。私たち日本が、いかに便利な食生活を送っているかに気付かされますよね。いくつか料理が出来るようにしていった方が良いと思います。ドイツの現状をお伝えて上げて下さい。

横路:そうですね(笑)。日本人の男の留学生で、料理が出来ない人はいませんでした。

駒ヶ嶺:その後の人生にも役立ちますよ!どうでしたか立花さん、フランスでお料理は。

立花:(フランスは)パンが美味しいから、とりあえずそれを買ってきて、あとおかず。卵料理は良く作りましたね。あと、パスタできるなら、1ヶ月大丈夫(笑)。

駒ヶ嶺:ベルギーの食生活はいかがですか?森吉さん。

写真

森吉:ある日本人男子学生がいまして、お料理が出来ない彼のために、お母様が毎食分のお料理を毎週冷凍で送ってきていたんですね。その方は性格的に凄く内向的な方で、あんまりお友達もつくらないで篭って練習をしているうちに、ついに精神的にまいってしまって帰ってしまった、そういう例もありましたね。まあ これは食生活の問題だけに起因する事例ではないですけれども。

駒ヶ嶺:すごいお話があったのですね。「何でも食べれてどこでも寝れる」というのは大事だと思います。アメリカのケースも伺いましょう。

高橋:食生活に関してはニューヨークはとても恵まれているところなので、スーパーもコンビニも札幌の倍はあります。24時間営業店が多く焼きたてのパンもいつでも食べられるし…ただ高いですね。野菜は日本より安かったと思います。日本食専門のコンビニというのもありました。炊飯器もそのコンビニで買えます。

駒ヶ嶺:では使い古したものを持っていかないように。そしてアジアンショップではお米も手に入り易いです。イタリアの食事は、安くて美味しいんじゃないでしょうか。

写真

伊藤:食費は生活費の中でもかなりかかるかと思いますが、ノルウェーで飢えを凌ぐための安くて良い食材ってありますか?

山本:人参が日本より安かったです。人参嫌いな人はダメですが・・・。

伊藤:人参ですか・・・。

駒ヶ嶺:人参嫌いなの?あらまー。

山本:人参嫌いだった場合は・・・

駒ヶ嶺:じゃがいも!

山本:じゃがいも同程度か安かったかなーと思います。大体日本より高いんですけど、人参だけは異様に安くて。

駒ヶ嶺:後は、日本から少しでも乾燥した日本食材を持って行くとか。

写真

山本:お醤油は、「ソイソース」って感じで日本のとはちょっと違いますね。持っていったほうがいいですね。

駒ヶ嶺:液体検査に引っかかる一升瓶は避けましょう。

伊藤:手荷物じゃなければいいんですね(笑)

横路:手荷物じゃなければ大丈夫。飛行機の中で、乾燥を保護しようとする・・・と捨てられます。

山本:あとは食物の中で必要最低限、味のついてないパサパサな硬いパンとかが20円とか、最低ランクのものであれば結構日本並の値段だなと感じた覚えがあります。そういうのは生活を保証する上での物資的なアレで(笑)・・そういうのがあればとりあえずは大丈夫です。

駒ヶ嶺:しっかり食べて、元気で帰ってきてくださ〜い(笑)!

高橋:お米さえ食べていれば、パワーはなんとか保てると思います。

写真

駒ヶ嶺:私の留学中の一番のご馳走は、炊きたてのご飯にバターをひと欠片、そしてお醤油をかけて食べるのが、もう涙が出るほど美味しくて・・・(笑)。それを惨めと思わなかった。贅沢と思いましたよ。ドイツやフランスなどは、学食が安くてお腹いっぱい食べれると聞いていますが。

立花:音大の中には無いんだけど、郊外に国際大学っていうのがあって、そこ4ユーロぐらいでしたよ。パンにおかず2品、もうちょっとお金払ったら3品とか増えていって、好きなのをバイキング形式で食べれるって感じでしたね。

駒ヶ嶺:大学以外にも博物館や美術館でもバイキング形式で食事できましたね。食べる事は本当に大事だと思います。疎かに出来ません。



⇒ 第6話 【治安について】へ続く