第29回ハイメスコンクール<ピアノ部門>  入賞者の発表

第1位  横山 瑠佳さん

横山 瑠佳(東京藝術大学音楽学部3年・苫小牧出身)


◆入賞された今のお気持ちをお聞かせください
とても嬉しいです。とても光栄な事と受け止めています。

◆留学に向けての現段階でのお考えはありますか
具体的には決まっていません。現在大学3年目ですので、卒業後はヨーロッパ、できればオーストリアへ留学したいと考えています。卒業までの1年間の中で更に考えていこうと思っています。

◆音楽家としての目標はありますか
演奏する時に心がけている事があります。楽譜から作曲家の意図を読み取り、自分が演奏するというよりも、作曲家自身が自然に演奏していたであろうという世界を読み取り、自然体で演奏出来るようにと思っています。「自然な音楽」を目指し自分自身が出過ぎないよう心がけています。

◆今回の演奏作品(F.リスト/巡礼の年 第2年「イタリア」より第7曲 ダンテを読んで ー ソナタ風幻想曲)について
この作品が好きであったこと。沢山表現する事があり、その事を考える事がとても楽しかった。課題曲としての演奏時間にも丁度良かった。今の自分のインスピレーションにピタッときました。 

第1位の横山さんには、宝石の玉屋様から副賞として、“純金ウィーン金貨ハーモニー”(1oz《オンス》)が贈呈されました。

第2位   大平 達也さん

大平 達也(シュトゥットガルト音楽大学大学院在学・札幌出身)


◆入賞された今のお気持ちをお聞かせください
この結果を受け止め、評価を頂いた事を嬉しく思います。

◆留学に向けての現段階でのお考えはありますか
既に2年ドイツ(シュットウットガルト)の大学院に留学中です。このコンクールのために一時帰国したため、自らプレッシャーをかけました。またこの後もドイツに戻ります。これまで、札幌から東京で6年間勉強した後に、ドイツへ渡りました。今までは一定の場所で長く学ぶことが多く、環境の変化は大きくなかったように思います。心も頭も柔軟な時期に様々な事を吸収したドイツでの2年間は、自分自身に「変化が起きている」実感があるので、今後もシュットウットガルトに限らず留学を続けようと思っています。できるところまで可能性をより広げたいです。

◆音楽家としての目標はありますか
ドイツ語で表現する事を「ausdrücken」と言います。「aus」外に、「drücken」押し出す、プレスするという意味の通り、人の心に何かを刻む事が出来る表現者になりたいです。現代社会の中で音楽家の存在価値のヒントはそこに有ると思います。

◆今回の演奏作品(C.ドビュッシー/半音階のための練習曲、B.バルトーク/ピアノソナタ Sz.80)について
ドビュッシーもバルトークもどちらも調性がはっきりしていない作品です。ドビュッシーは、シンプルな半音階という素材が知的に発展する「素材遊び」に興味があり、「練習曲」と言いつつも、ショパンなどの練習曲とは違った趣向で作曲されている点に魅力を感じています。バルトークはメロディーやリズム、和声の点で独自の語法がある上に、ポリフォニックかつ効果的な音響、構成がしっかりしている事など、大胆さと緻密さの両面に魅せられて選曲しました。

現在、ドイツに留学中の大平さんにご自身の留学生活についても伺いました
◆留学経験について、どのようなことを感じていらっしゃいますか
人種の違いに触れること、空気や物、響きの違いなど全てがプラスとなっています。
◆将来について
能力や感性、人間としての引き出しを常に広げていきながら、どこで仕事ができる身を委ねて行きたい。 

第2位   下田 絵梨花さん

下田 絵梨花(桐朋学園大学音楽学部4年・江別出身)


◆入賞された今のお気持ちをお聞かせください
演奏後に反省するとことがありましたが、このような評価を頂き温かく背中を押して頂いたと事を大変有り難く感じています。

◆留学に向けての現段階でのお考えはありますか
具体的には決まっていませんが、希望としては、ピアノを弾く事や先生も大切ですが、音楽そのものについてもっと深く学べる環境を留学先として選びたいと考えています。

◆音楽家としての目標はありますか
ある作曲家やある時代の作品が得意であるという事ではなく、今は古典から現代まで色々と挑戦し絞らず幅広く演奏できるピアニストを目指し頑張っていきたいです。

◆今回の演奏作品(S.ラフマニノフ/ピアノソナタ 第2番 変ロ短調 作品36(1931年改訂版))について
表現の可能性が沢山有る作品で、その中から自分自身何を選び演奏するかが楽しかったです。名人芸的でピアニストが自分自身を表現する派手な作品と思われがちだが、ラフマニノフらしい「じんわりくる」ポイントを表現することを目標に取り組みました。

審査委員長 田代慎之介先生からの講評

今日はたくさんの力演を聴かせていただきました。誠にありがとうございました。
ここはホールも素晴らしく、ピアノも素晴らしく、その上にみなさんがしっかり準備をして力演をしてくれましたので、とてもよい審査ができたと思います

このコンクールというのは留学のための助成をするということですね。
私も2年間ハンガリーに留学しましたけれども、それは本当にかけがえのない経験でした。今も常にその時のことを思って、その時のことを発展させて活動、仕事をしているといっても過言ではありません。
ですから、留学を目指してみなさんがこうして挑戦してくれたことはとても意義深いと思います。

さて、みなさん結果を知りたいでしょうから講評は簡単に、演奏についてのコメントは先生方がお一人お一人にコメントを書いてくださっていますので、至って一般論を一言二言申し上げるにとどめたいと思います。

まず、こういったコンクールではやはり完成度というものが大事になります。
その完成度を高めるということは、ただテクニックという面からだけではなく、一つには曲の構造をよく知る、そして、一つには自分の潜在力がより発揮できるようにいろいろ興味を広げてほしいのです。
といいますのは、ピアノというのは、皆さんが披露してくれたのもソロです。ピアノは一人で弾きます。
それは改めて考えますと、皆さんよくご存知のように一人でステージに上るというのはかなり稀なはずです。声楽で歌う方にしても、ヴァイオリンほかフルート、どんな楽器でもそれこそピアノ伴奏などがつきますね。室内楽分野でもそうですし、またはオーケストラと共演ということもあります。

本当に一人で弾くというのはピアノくらいなのです。
というのは楽器の性格上、その楽曲の中にソリストもあれば伴奏者もある、そういう楽曲、楽器の性格だからですね。
ピアノのソロの曲を深めていく、そのためにはいろいろな楽器に対して興味をもち、それに対して自分のイマジネーションを広げることが大事なんですね。

今日聴いておりまして、非常に熱演してくれているのですが、本当にそういう想像力を働かせて弾いてくれているのかな、弾くことに一生懸命になりすぎているのではないか、
もっと自分の音を聴いて、例えてみれば、ここはフルートだとか、ここは名歌手の歌なんだとか、ソリストにかぎらずこの音型はどういう伴奏で導いているのだろうか、
その意識を多角的にしていくこと、そういうことからサポートされて完成度も上がっていく、自分が納得して演奏できるようになっていくと思います。
これらは日本にいてももちろん勉強できますし、留学しましたら現地で音楽を聞く機会もより広がっていきます。そういう意味で留学は私の経験からいっても、価値あるものですし、演奏に対して一言申し上げたことからいきますと、いろんなことに興味を持ち、いろんな楽器に興味を持ち、
また楽曲の構造、そういうことを深く理解することでますます演奏の質を高めていってほしいと思います。

本日は素晴らしい演奏をたくさん聴かせていただきありがとうございました。 

2017.3.22 第29回ハイメスコンクール表彰式にて

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